デジタル庁のダッシュボードガイドブックを Claude Code のスキルにした
デジタル庁が「ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」をリニューアルした。このツイートで知った。
<ぜひ拡散のほどを!>
— hikaru / 樫田光 (@hik0107) March 31, 2026
デジタル庁より公表している「ダッシュボードのテンプレート」をリニューアルしました。誰でも、より簡単にキレイなダッシュボードが作れるようになります。
・グラフの種類を大幅に増えました
・カラーパレットが7タイプから選べます
・活用事例がどんどん増えています
行政向けの資料だけど、民間でもそのまま使える内容だった。チャートの選び方、Do’s/Don’ts、カラーパレットまで、ダッシュボードを作るときに必要な判断基準が一通り揃っている。
業務では Lightdash で BI as Code をやっている。ダッシュボードやチャートを YAML で定義して Git 管理し、CI/CD でデプロイする運用。YAML を書く部分は Claude Code のスキル(コンテキストとして自動で読み込まれるドキュメント)で半自動化しているが、「どのチャートタイプを選ぶか」「何を載せるか」の設計判断はスキルでカバーできていなかった。
ガイドブックの内容がちょうどこの穴を埋めてくれるので、スキルに変換した。
ガイドブックの概要
59ページの PDF で、以下の構成になっている。
- はじめに — ダッシュボードの定義と類型(提示型 vs 探索型)
- 要件の整理 — 5W1H フレームワーク、制約条件の確認
- プロトタイピング — 載せるべき情報の選定原則、レイアウトの考え方
- 情報表現のポイント — グラフの種類と選び方、カラーパレット、グラフ設計の原則、Do’s/Don’ts
- 実装 — チェックリスト、アクセシビリティ
「情報表現のポイント」の章が特に良くて、Do’s/Don’ts が具体的な図解つきで書かれている。「棒グラフの原点は0にする」「色のみで分類を識別しない」「タイトルにデータ種別を表記する」など、わかっているつもりでも雑になりがちなポイントが並んでいる。
ガイドブックの中身で使えるところ
スキルに入れるにあたって、59ページの中から BI as Code のワークフローで実際に使える部分を抜き出した。いくつか紹介する。
ダッシュボードの類型
ダッシュボードは「提示型」と「探索型」の2つに分かれる、という整理がまず冒頭にある。
| 提示型 | 探索型 | |
|---|---|---|
| 目的 | 概況の把握 | 詳細の分析 |
| 前提知識 | 一般的な知識 | 特定のドメイン知識 |
| 操作 | 単純な操作 | 複雑な操作 |
自分のチームで作っているダッシュボードはほぼ提示型。「見る人が素早く状況を把握して、異常に気づいて、行動の必要性を判断する」のが目的。これを言語化してスキルに入れておくと、Claude が勝手にフィルターを大量に生やしたり、探索型寄りの設計にしたりすることが減る。
チャート選択ガイドライン
「伝えたい情報」からグラフの種類を逆引きするテーブルがある。スキルへ組み込む際、Lightdash の chartType とのマッピングを追加した。
| 伝えたい情報 | グラフ | Lightdash chartType |
|---|---|---|
| 時間変化・傾向 | 折れ線グラフ | cartesian (line) |
| 数量比較 | 棒グラフ | cartesian (bar) |
| 構成比 | 円グラフ/ドーナツ | pie |
| KPI 単値 | 指標 | big_number |
特に円グラフについて「多くの場合、棒グラフの方がデータを正確に伝えられる」と明記されているのが良い。これがスキルに入っていると、Claude が安易に円グラフを提案しなくなる。
Do’s / Don’ts
10項目ある中から、自分が刺さったものをいくつか。
- タイトルにデータ種別を表記する —「国産自動車」ではなく「国産自動車の出荷台数(月次推移)」。タイトルだけでグラフの中身がわかるようにする
- グラフと凡例を隣接させる — 凡例が離れていたり、順番がグラフと逆だったりすると誤読の原因になる
- グラフに使用する色数を絞る — 目安は 1〜5色。注目すべき系列を明確にする
わかっていても、チャートの YAML を書いているとつい雑になる。スキルに入れておくことで、レビュー時にも「ガイドブックの Do’s/Don’ts に照らしてどうか」という観点が入る。
スキルの構成
もともと Lightdash の YAML テンプレートや実装手順をまとめたスキルがあった。デザイン原則を同じスキルに足すとサイズが膨れるので、別スキルに分けた。
設計判断(WHY / WHAT) → lightdash-design-principles(今回追加)
実装手順(HOW) → lightdash-guide(既存)
制約・規約(MUST) → rules/lightdash/(既存)
スキルの description にキーワードを書いておくと、Claude Code が指示内容に応じて自動で読み込むスキルを選んでくれる。「ダッシュボード設計」「チャート選択」みたいな話をするとデザイン原則スキルが読み込まれ、YAML を書き始めると実装ガイドスキルに切り替わる。
59ページをスキルに落とすときの取捨選択
PDF をそのままスキルに突っ込んでも効かない。コンテキストが長すぎると Claude は重要な部分を拾えなくなるし、自分のワークフローに合わない記述が混ざっていると判断がブレる。59ページを約280行のスキルに絞り込むにあたって、いくつか判断基準があった。
「コードで表現できるか」で切る
スキルに入れる意味があるのは、Claude が YAML を書くときに参照できる情報。「棒グラフの原点は0にする」は YAML の min: 0 に直結するから入れる。「PowerPoint でプロトタイプを作る」はコード生成と関係ないから入れない。
同じ理由で、アクセシビリティの詳細(スクリーンリーダー対応など)も外した。Lightdash の YAML レベルでは制御できない領域なので、スキルに書いても Claude が実行できない。
ツール固有のマッピングを足す
ガイドブックの記述はツール非依存。「時間変化を見せたいなら折れ線グラフ」とは書いてあるが、それが Lightdash の chartType: cartesian の type: line に対応するとは書いていない。
この対応関係を足さないと、Claude は原則を理解しても正しい YAML を出力できない。逆に言えば、マッピングさえ足せばガイドブックの知識をそのまま YAML 生成に活かせる。ここの効果が一番大きかった。
自チームの文脈を足す
ガイドブックは汎用的に書かれているので、「提示型と探索型がある」という説明はあっても「うちのチームはどっちか」は書いていない。スキルには「主に提示型」と明記した。これがないと Claude は毎回どちらの方針で設計すべきか迷う。
カラーパレットも同じで、ガイドブックには7タイプのパレットが載っているが、全部入れると Claude がどれを使うか迷う。実際に使うパレットだけに絞った。
捨てたものの基準
まとめると、以下に該当するものは外した。
- コード生成に関係しないプロセスの説明(プロトタイピングの進め方、ステークホルダーとの合意形成など)
- 使っている BI ツールでは制御できない領域
- 複数の選択肢が並列で書かれていて、自チームの文脈を足さないと判断できないもの(そのまま入れると迷いの原因になる)
利用規約
ガイドブックは公共データ利用規約(PDL1.0)の下で公開されている。CC BY 4.0 と互換性があり、出典を記載すれば自由に利用・加工・商用利用が可能。スキルファイルには出典と加工した旨を記載している。
やってみて
Do’s/Don’ts が図解つきで書かれていて、そのまま実務に持ち込める内容だった。
スキルにしたことで、ダッシュボードの YAML を書くときに設計原則が勝手にコンテキストへ入るようになった。Claude が円グラフを出してきたときに「スキルに『棒グラフの方が正確に伝えられる』と書いてあるので棒グラフにします」と自分で判断を修正してくれる、みたいなことが実際に起きている。
ガイドブック自体は BI ツールに依存しない内容なので、Lightdash 以外でも参考になるはずだ。
出典:「ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」(デジタル庁)(2026年3月31日版) https://www.digital.go.jp/resources/dashboard-guidebook PDL1.0 に基づき、内容を要約・加工して利用。